
自動車に装着されるタイヤホイールにはさまざまな種類があり、その性能にも違いがあります。
ホイールは軽量かつ車両の走行負荷に耐えられる強度が求められますが、軽さや強度は素材や製法によって左右されます。一方でホイールは車両の足回りの印象を変えるパーツでもあり、デザインや構造にもこだわりたいところです。
デザイン別ホイールの種類
スポークタイプ
中央から支柱=スポークが伸びているタイプです。アルミホイールではオーソドックスなデザインでもあり、スポーティーさが特徴です。

メッシュタイプ
スポークを細くし、網目状(メッシュ)に配列されたタイプです。
スポークが交差するポイントがあるのが特徴です。交差させるポイントや角度も異なり、さまざまなデザインがあります。
また、メッシュタイプの原型ともなるデザインにワイヤースポークタイプがあります。こちらのタイプは自転車のホイール同様に金属ワイヤーの張力によってホイールの形を保っています。
ホイールそのものにサスペンションとしての役割があるため、クラシックカーでは重宝されていました。一方で定期的な張り調整が必要など手間がかかることから需要が減り、現在では製造するメーカーも少なくなっています。

フィンタイプ
多数の細いスポークによって構成されているタイプです。
スポークタイプの派生型になり、スポークタイプが5~10本程度で構成されるのに対して、より多くのスポークで構成されるものをフィンタイプとして区別しています。

ディッシュタイプ
ディスク部がディッシュ(皿状)に見えるタイプです。スチールホイールでは凹凸と肉抜き穴のある一般的なデザインですが、アルミホイールではより平面度の高いデザインもあり、大きな面積を持つのが特徴です。
一方で大きな面積を持つことで重量が増加しやすく、またブレーキも覆い隠してしまうため、ブレーキで発生した熱が籠りやすい傾向にあります。

構造別ホイールの種類
アルミホイールは一体式の1ピースタイプと、複数のパーツで構成されるマルチピースタイプがあります。
1ピース(ワンピース)
タイヤをはめるリム部と、スポークなどのディスク部の全てが一体で成形となっているタイプです。
モノブロック構造と呼ばれることもあり、1つの部材から作られているため強度が高いです。他のタイプに比べて剛性を確保しやすく、一体式であることから部品の欠落や緩みが無いというメリットがあります。製造がシンプルという点がありますが、その反面でデザインの自由度は低いという点があります。
2ピース(ツーピース)
リムとディスクを別々に造り、リムとディスクを溶接またはボルトの締め付けによって固定結合させたマルチピースタイプです。
オーダーメイドでリムに対してディスクの位置=インセットを変更することが可能で、ディスクがリムの中に入り込んだ深リム仕様にできます。ディスク部が分離されたことで、加工がしやすくデザイン性の高い製品が作れます。
ただし、価格が高く、重量が重くなってしまうというデメリットがあります。
3ピース(スリーピース)
アウターリム、インナーリム、ディスク部の計3パーツで構成されるマルチピースタイプです。
2ピース同様に接合部の剛性不足による重量増加がしやすい傾向にありますが、各パーツの素材や製法を変えることで機能性やデザイン性の向上に繋がっています。ホイールとしては最高級品として扱われ価格も高価です。
製造方法別ホイールの種類
鋳造(ちゅうぞう)
ホイールの型に溶けたアルミニウムを流し込んで成形する手法です。量産性に優れ、デザインの自由度も高いため、現在は多くのホイールがこの鋳造製法です。製造コストも高くないため、アルミホイールとしては比較的安価なものとなります。
鋳造法にもいくつか種類があり、重力に任せて溶けたアルミ=溶湯(ようとう)を流し込む「重力鋳造法」は他の金属でも見られるもので、金属パーツを作る上では基本的な手法です。
ただし、この重力鋳造法ではアルミの分子が下方に偏りやすく、気泡などによってパーツ全体での均一性を保つのが困難です。そこである程度圧力を加えつつ型に流し込む方法として、低圧ガスを使う「低圧鋳造法」や、圧をかけて溶湯を型に注入する「ダイカスト法」などがあります。
また凝固していく過程で圧力を加える「スクイズキャスティング」というのもあり、鋳造と鍛造を組み合わせた手法です。型に流し込むまでは鋳造工程ですが、冷えて固まる過程で高圧を加えて鍛造をおこなうため、従来の鋳造よりも強度や軽量化に優れています。
フローフォーミング製法
鋳造ホイールでありながら、強度を確保したままで軽量化が可能になった革新的な製法です。鍛造ホイールと同格の強度、軽量化までは難しいですが、鋳造ホイールの特徴であるデザインの自由度の高さと量産性があるのが特徴です。
金型鍛造(たんぞう)
熱せられたアルミニウムをプレス機によって圧縮成型する手法です。金型にてある程度の形に成形した後、切削加工を行い余分な個所を削り取ります。高い圧力が加えられるためアルミの粒子が高密度化され、鋳造に比べて高い強度と軽量化が可能です。
通常のホイールよりも重量の軽い軽量ホイールは、乗り心地や操縦性が向上します。そのため、コンマ1秒を競うレースシーンで人気があります。また、燃費にも貢献することから、「エコホイール」とも呼ばれています。
一方で金型で成形できる形状にも限度があるため、デザイン性の高い物を作るには不向きです。また、製造に必要なプレス機と金型が高価であるため、販売価格も鋳造アルミホイールに比べて価格が高くなります。
金型を使う鍛造法として一般的なのが「熱間鍛造法」で、アルミが個体として形を保てる400~500℃に加熱しながら高圧プレスをかけて圧縮と成型を繰り返します。「半溶融鍛造法」では熱せられて個体と液体が混じった柔らかい状態になったアルミを使用し、金型にて圧縮成形されます。
鍛造(たんぞう)削り出し
あらかじめアルミニウムの塊を鍛造加工し、切削加工マシンにてホイールの形に削り出しをおこなう手法です。切削加工マシンによって成形をおこなうため、金型鍛造では難しいデザインにもできます。
金型鍛造に比べると削り出しによるアルミ材のロスは多いものの、高価なプレス機と金型の導入は不要です。切削加工マシンはさまざまなデザイン変更にも柔軟に対応できるため、金型鍛造のアルミホイールに比べて安価で、新規参入したメーカーが取り入れやすい製造法と言えます。